卵子ドナーサイクルにおいて、よく卵子ドナー使用の受精卵に対し、着床前診断(染色体異数性の検査(PGT-a)の実施をしたほうがよいか、と質問される。卵子ドナーを依頼する側からの懸念としては “第三者からの細胞なので検査しておきたい”というものである。
卵子ドナーの基本資格は20代で健康体、全ての感染症検査も陰性であり、月経のデイ3の基本値も標準であり、デイ3の卵胞数も十分に2桁ある、というプロフィールである。
米国生殖医療協会(ASRM)の着床前診断委員会による現在(最新2024年)の立場、及び、世界のトップドクターらの考え方は、20代の健康な卵子ドナーに対して、着床前診断は不必要で、着床前診断を行うことが価値はみいだせない、という考え方が一般的である。これは米国生殖医療協会(ASRM)の最新の文献でも発表されているが、統計的に、着床前診断を行うことが、妊娠、出産に影響がないことが示されている。
体外受精サイクルにおいて、受精卵は冷凍せずフレッシュが妊娠率が高いことも、着床前診断が不必要である理由の一つである。これは、着床前診断を実施するためには、胚盤胞で生検が行われ、冷凍が伴うためだ。また、採卵サイクルと移植サイクルが同サイクルで継続されて(同一の患者に対し)行われることはホルモンの上昇から妊娠率を下げることが分かっているが、卵子ドナー使用サイクルにおいては、移植されるレシピエントにとっては、採卵サイクルを経ていない、実質的に採卵サイクルとは別サイクルとなり、排卵促進剤によりホルモン値が上昇し妊娠率を下げる、という懸念を心配することもなく、受精卵を冷凍せずにフレッシュのまま移植できる、という優位点もある。
上に述べたように、20代の健康なドナー卵子を着床前診断を実施した場合と、着床前診断を実施しない場合と妊娠率や正常な出生率に違いがないことが分かっているのは、20代の健康なドナー卵子の優良な受精卵から移植するため、それらの状態の良い優良な受精卵は、染色体異常がそもそもなく、検査をするもしないも、事実上、健康である確率が高いためであろう。
また、着床前診断の費用もかかることを考えると、不必要である、という考え方が一般的である。
また、卵子ドナー使用の受精卵に対する着床前診断の有無以外に、米国生殖医療協会(ASRM)の着床前診断委員会は2024年の最新の発表で、複数の卵子ドナー使用の受精卵移植は、多胎妊娠が多いことから、卵子ドナーによる受精卵に関して、着床前診断を実施の有無は関係なく一つのみの受精卵移植を推奨している。
卵子ドナーを使用して、性別を選択したい場合は、PGT-aによって性染色体が判明するので、もちろん有効である。


